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第4話 変わっていく未来

last update publish date: 2026-08-30 11:57:06

「――どういうことなの!?」

 思わず声が漏れた。

 知らない靴は黒い革靴だった。どう見ても女性のものではない。

 それがまるでこの家の住人のように、玄関にきちんと揃えて置かれている。

「ママ?」

 腕の中で、陽奈が不安そうに私を見上げた。

 駄目。陽奈を怖がらせちゃいけない。

「大丈夫よ」

 そう言った自分の声が震えていた。

 大丈夫なはずがない。

 だって、この部屋には誰もいないはず。

 それなのに、かけたはずの玄関が開いていて、誰かがいる――

「相沢さん」瓢社長が振り返った。「陽奈ちゃんを連れて、階段まで下がってください」

「でも、社長は……」

「僕は中を確認します」

「駄目です!」

 思わず大きな声が出た。瓢社長が目を見開く。

「中に誰がいるか分からないんですよ!?」

「だからです」

「だからって……殺されるかもしれないんですよっ! 絶対、それだけはやめてください!!」

 私を殺した犯人が、もし、標的を変えて社長を狙ったりしたらと思うだけで震える。

「わかりました。では、こうしましょう」

 そう言って、瓢社長はスマートフォンを取り出した。「警察を呼びます。僕も中には入りません」

「……え?」

「こういうときは、素人が余計なことをしない方がいいですね」

 冷静だった。

 私は今にも膝から崩れ落ちそうなのに、瓢社長は状況をひとつずつ確認していく。

「まず、安全な場所に移動しましょう」

 そのときだった。

 ガタンッ!

「……っ!」

 部屋の奥から音がした。

 いる。

 誰かいる――!

「ママ……」

 恐怖を感じ取った陽奈が私の手をぎゅっとを握りしめた。

 瓢社長が私たちの前に守るようにして立ってくれた。

「下がって!」

 その声と同時だった。

 バンッ!

 部屋の奥で何かが倒れる音。続いて、ベランダの窓が開く音がした。

「待て!」

 瓢社長が玄関から室内を覗く。

 けれど、追いかけずにすぐに私たちの方へ戻ってきた。

「社長……」

「逃げられてしまいました。でも、相沢さんがなにもされなくてよかったです」

 瓢社長が私を見る。

「すぐに警察へ連絡しましょう」

 社長がすぐに対応してくれた。ほどなくしてパトカーが到着。私たちは中に入らず、陽奈と身を寄せてじっと待った。それを、社長が包み込むようにして傍にいてくれた。

 駆け付けた警察官が部屋の中を確認してくれたが、すでに誰もいなかった。当然だろう。

 社長に見つかってそのまままだ家の中にいる犯人なんていない。

 締めていたはずのベランダの窓が開いていた。社長の証言通り、そこから逃げたらしい。

「盗まれたものがないか、確認してもらえますか?」

 警察官に言われ、私は恐る恐る部屋へ入った。

 リビング。

 異常はない。

 テレビもある。

 寝室も荒らされていない。

「……何も盗られてないと思います」

「空き巣目的ではない可能性もありますね」

 ぞくりとした。

 じゃあ、何のために入ったの?

 答えなんて、考えるまでもなかった。

 ――それは、私。

 この家に住んでいる私の帰りを待っていた。

 そう考えた瞬間、吐き気が込み上げてくる。

「ママ?」

「大丈夫」

 そうは言っても大丈夫じゃない。

 怖い。

 怖くて仕方がない。

 前の人生で私を殺した男が、もう動き始めている。

 しかも前より半年も早く。

 だったら前世の記憶なんて、あてにできない。

 未来が変わっているなんて、どうすればいいの?

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